社会の変化を先取りし、成功へと導くマーケティングの秘訣

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みなさん、こんにちは。前回のコラムでは、ビジネスプランを作成する際に「マーケットの特定」から始める方法について説明しました。今回は、ターゲット業界を観察し、その業界がマーケットに対してどのような不満や不利益を引き起こしているのかを探っていきます。そして、最も不満や不利益の大きいマーケットを特定することで、ビジネスの方向性を検討していきます。

ターゲット業界を選ぶ際の3つのポイント

新規事業を始める際、最初のハードルの一つはターゲット(=ディスラプトもしくはリプレイス)とする業界の選定です。業界選びを間違えると、事業の成長に大きな影響を与えかねません。そこで、今回は新規事業のターゲット業界を選ぶ際に注目すべきポイントを3つご紹介します。まず1つ目は、目指す事業規模です。年商10億円を目指すのか、100億円を目指すのかによって、ターゲットとする業界は大きく変わります。例えば、年商10億円の事業であれば、ニッチな市場でも十分に可能性がありますが、100億円を目指すのであれば、ある程度の市場規模が必要不可欠です。

2つ目は、業界の競争状況です。一部の大手企業による寡占状態か、多くの中小企業が参入している非産業化された状態かを見極めましょう。寡占状態の業界に参入するのは容易ではありませんが、参入障壁が高い分、参入後の利益も期待できます。一方、中小企業が多い業界は参入しやすい反面、競争が激しくなる傾向にあります。

3つ目は、業界の収益構造です。その業界が利益を出しやすい環境にあるかどうかを判断することも大切です。コストを抑えられる仕組みがあるかなど、業界の収益構造を確認しましょう。これらの3つのポイントを基に、ターゲットとする業界の候補を絞り込んでいくのが、定量的に分析を行う際の一般的なアプローチです。たとえ、あまり詳しくない業界であっても、その業界が直面している課題や潜在的な可能性を客観的に評価することができます。そのため、我々も新規事業の方向性を決定する上で、この方法を活用しています。

医薬品業界のバリューチェーンから考える中間コストの削減

ここで、医薬品業界を例に挙げて考えてみましょう。この業界では、新薬の開発から臨床試験、製造、流通、販売に至るまで、製品が消費者の手に届くまでのプロセスにおいて、非常に高いコストがかかるという特徴があります。では、ここで一つ問いを投げかけたいと思います。もし、最新のテクノロジーを導入することで、これらのコストを削減し、結果的に製品がより安く消費者に届けられるようになるとしたら、どうでしょう?簡単に言えば、普段私たちが支払っている額の多くは、実は製品そのものの製造コストではなく、その製品が手元に届くまでの「中間コスト」なのです。これを理解する上で、医薬品業界の「バリューチェーン」、つまり製品が製造されてから消費者の手元に届くまでの一連の流れを見ることは非常に重要です。一般的に、従来の商品やサービスの価格を半分以下にしようとする場合、現在の粗利率が少なくとも70~80%でなければ収益構造を変更するのは難しいとされています。この粗利率を考える際に重要なのは、メーカーだけでなく、バリューチェーン全体を見ることです。バリューチェーンとは、原材料の調達から最終消費者への販売に至るまでの一連の活動を指します。このチェーンが長ければ長いほど、販売管理費がかかっているということであり、変更の余地があることを意味しています。実は、この”中間コスト”の問題は、医薬品業界だけでなく、多くの業界に共通しています。特に第3次産業では、人の手による業務が多く、原価が発生しにくいため、粗利率が高くなる傾向にあります。不動産仲介業がその好例で、物件情報の収集や顧客対応など、人的業務が中心であるため、粗利率が100%に達することもあるのです。これらの業務をAIやロボットで代替できれば、コストを大幅に削減することが可能です。つまり、私たちが日常的に利用するサービスや商品の価格を、もっと安くできる可能性があるのです。