社会の潮流を捉えて勝機を掴む~先読みするビジネス立案のコツ~

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みなさん、こんにちは。前回のコラムでは、ビジネスプランを作成する際に「マーケットの特定」から始める方法について説明しました。今回は、ターゲット業界を観察し、その業界がマーケットに対してどのような不満や不利益を引き起こしているのかを探っていきます。そして、最も不満や不利益の大きいマーケットを特定することで、ビジネスの方向性を検討していきます。

高齢化社会が生み出す新たなビジネス機会

近年、日本では高齢者の世帯が増えているといわれています。総務省のデータを見ると、75歳以上の後期高齢者世帯は年々増加傾向にあり、2020年には382万世帯に達しています。特に、そのうちの多くが単身高齢者、いわゆる”独居老人”なのです。この状況を見て、「ここには何か問題があるのでは?」と考えるのがポイントです。高齢者の日常生活やライフイベントに目を向けると、不利益が潜んでいることに気づくはずです。例えば、「転居」の場面を想像してみてください。単身高齢者が新しい住まいを探す際、連帯保証人がいないために家を借りられないという問題が発生します。不動産賃貸業者としても、高齢者の孤独死リスクを考慮すると、入居を敬遠せざるを得ません。ここで、「不動産賃貸とは違う形で、高齢者の住まい探しを支援できないだろうか」と発想を転換してみます。すると、連帯保証人サービスを提供するビジネスアイデアが浮かんできます。このように、社会の変化を敏感に捉え、そこから問題を見つけ出し、既存の枠にとらわれない解決策を考えることが、新しいビジネスチャンスを生み出すカギとなるのです。

成長産業に注目してマーケットを探す

有望なマーケットを探すとき、世帯構成だけでなく職業にも注目することも有効な手法の一つです。今、日本国内で働く人々の数が特に増えている分野は、情報技術やサービス関連業界です。中でも、「医療・福祉」の分野では働く人の数が大きく増加しており、それに続いて「情報通信業界」でも、同様に従事者が増えていることが明らかになっています。詳しく見てみると、医療分野で特に「介護職」の需要が急増しており、情報通信の世界では、「エンジニア」などの専門職が際立って伸びています。このような傾向は、社会や経済の変化を示しており、新しいビジネスの機会がここに潜んでいることを意味しています。「介護職」や「エンジニア」といった職業が成長している背景を考えることで、新たなビジネス展開に役立てられるはずです。

ターゲット業界を選ぶ際の3つのポイント

新規事業を始める際、最初のハードルの一つはターゲット(=ディスラプトもしくはリプレイス)とする業界の選定です。業界選びを間違えると、事業の成長に大きな影響を与えかねません。そこで、今回は新規事業のターゲット業界を選ぶ際に注目すべきポイントを3つご紹介します。まず1つ目は、目指す事業規模です。年商10億円を目指すのか、100億円を目指すのかによって、ターゲットとする業界は大きく変わります。例えば、年商10億円の事業であれば、ニッチな市場でも十分に可能性がありますが、100億円を目指すのであれば、ある程度の市場規模が必要不可欠です。

2つ目は、業界の競争状況です。一部の大手企業による寡占状態か、多くの中小企業が参入している非産業化された状態かを見極めましょう。寡占状態の業界に参入するのは容易ではありませんが、参入障壁が高い分、参入後の利益も期待できます。一方、中小企業が多い業界は参入しやすい反面、競争が激しくなる傾向にあります。

3つ目は、業界の収益構造です。その業界が利益を出しやすい環境にあるかどうかを判断することも大切です。コストを抑えられる仕組みがあるかなど、業界の収益構造を確認しましょう。これらの3つのポイントを基に、ターゲットとする業界の候補を絞り込んでいくのが、定量的に分析を行う際の一般的なアプローチです。たとえ、あまり詳しくない業界であっても、その業界が直面している課題や潜在的な可能性を客観的に評価することができます。そのため、我々も新規事業の方向性を決定する上で、この方法を活用しています。